第32回:現代の航空戦 最強戦闘機の条件(中)

電子戦が生死を分ける

「Su-37スーパーフランカーにアメリカ製アヴィオニクスを搭載すれば最強だ。」

こういう言葉を何十回と聞いたことがあります。
なるほど。コブラやらクルビットやら、それ自体は戦闘に役立ちはしないものの、低速においてでも高い機動性を実証しているSu-37にアメリカ製アヴィオニクスを搭載すれば最強ではないのか?と言いたいのは理解できます。

アヴィオニクスと一言で言ってもあまりにも定義が大きすぎますが、電子戦システム、戦術データリンク、レーダー、フライトコントロールコンピューター、それらを総括するセントラルコンピューター…etc.とりあえずこれだけ挙げてみました。
ミサイルと同様、いやそれ以上に現代の航空戦で勝敗を決めているのは情報戦(戦術データリンク)と電子戦(電子戦システム)です。
この情報戦と電子戦能力は、機動性のような派手さは無く地味で目立たない存在ですが、この能力こそ最も重要な要素です。

情報戦とはE-3AWACSを基幹とした指揮/管制/通信/情報の統制、いわゆるC3I(シースリーアイ、もしくはシーキューブドアイ)と呼ばれるシステ ムのことであり、現代の航空戦(上)で例として取り上げた湾岸戦争、ユーゴスラビア空爆はまさにC3Iが適切に機能した実例といえます。
度々MiG-29を出してしまい、ファンの方には申し訳有りませんが…MiG-29はF-15を初めとする米国戦闘機群に勝るとも劣らない戦闘機ですが、 常にE-3AWACSに監視されつづけており、ほとんどパーフェクトゲームで手も足も出ないまま撃墜されております。航空戦のC3Iにも未だ問題が無いわ けではありませんが、湾岸戦争以来空対空戦闘で撃墜された機体はF/A-18が1機だけです。

もう一つの電子戦は簡単に言うと、相手のレーダーの視距離を短くするものです。例えばジャミングを行い、敵側のレーダー有効射程を短くしたり、チャフやフ レア、曳航式/発射式デコイの放出など、ECMと呼ばれる電子対抗手段です。これは自身の搭載している機器や、友軍の電子戦機の支援も含まれる自身が生き 延びるための戦術です。

確かにSu-37は運動性能は素晴らしいし、さらには強力なレーダーとミサイルを持っています。が、これらの能力に欠けております。Su-37に21世紀 の最新式F-15EやF/A-18Eの電子機器をそっくりそのまま乗せかえる事が出来れば、機動性に勝っている分、強力な先頭能力を得る事ができるかもし れません。
ただ、そんなわざわざ乗せかえるならF-15EやF/A-18Eを使ってた方が断然お得です。
「上」でも述べたようにミサイルの性能は戦闘機の機動性をはるかに上回り、信頼性も抜群に向上。さらには「戦場の情報革命」を合言葉に高度にデジタル化さ れた航空戦では、機動性の良し悪しは二の次三の次になってしまっております(くどいようですが、それでも格闘戦闘能力は非常に重要な要素の一つです)。


(更新日:2002年3月24日)


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