第31回:現代の航空戦 最強戦闘機の条件(上)

ミサイル万能時代脱却後は真のミサイル万能時代か。


現代の戦闘機対戦闘機は中射程ミサイルを使用した目視外による戦闘が主流です。湾岸戦争以来11年間で機関砲や赤外線誘導の短射程ミサイルを使用し、ドッ グファイトで勝敗が決まるという例は1件もありませんでした。AIM-9短射程ミサイルを使用しての撃墜例も多くありますが、全てドッグファイトへ入る以 前に撃墜を記録しています。

これらの撃墜のほとんどはF-15やF-16によって成し遂げられており、撃墜された機体は旧式のMiG-21から、初飛行の年月日だけで比べるとF- 15/F=16よりも新型であり、F-15やF-16よりも高い機動性を持っていると自称するMiG-29までもが含まれています。

1960〜70年代に言われてた「ミサイル万能時代」は、ベトナム戦争でそのミサイルの性能があまりにも低い水準に驚かされ、血塗られた教科書を得てそん な言葉は幻想であるとの教訓を得ました。F-4編隊がAIM-7スパロー中射程ミサイルを十発以上一斉に発射して、敵機が回避して逃げればそれでよし、命 中すれば儲けものという程度であり、スパローの50%は正常に動作せず、
本来目視外射程であったスパローを目視内で運用しなければならなかった政治的決定も手伝って、さらに命中を期待できるのはたった10%であったとされています。
機関砲も装備していなかったため、旧式であるものの旋回性能の高いMiG-17にF-4が撃墜されるという例もありました。
その戦訓により、接近戦でも負けない高い機動性を持って生まれたのがF-15やF-14です。

それから20年…1990年代に入ると、ミサイルは更なる発展を遂げ「一発必殺」とも言えるレベルにまで達しました。その代表格がBVRミサイルAIM- 120AMRAAMです。実戦で発射した最初の5発までは、命中率100%を記録し、その様相から「スラマー:必殺野郎」などと呼ばれるようになりまし た。

最近では、ロックオンされるとすぐ逃げることによりAIM-120が命中しない例も増えてきましたが、これはあくまでも最初から攻撃する意思を持っておら ず、ただ挑発のため接近して、AIM-120が発射されても回避できる可能性が高いうちに引き返していたからであり、明らかな「敵意」を持って接近する相 手に対してはAIM-120は、必殺野郎の名に恥じない高い命中律を保持しつづけています。
1999年ユーゴスラビア空爆アライドフォース作戦では、何機ものMiG-29がスラマーにより叩き落されています。

現在でも目視内の高機動戦闘に勝てる能力は重要な要因であることには違いありません。そのため,
とても想像もつかないほど厳しい空中戦訓練を行っているわけですが(ドッグファイトは機体うんぬんよりも、ウデが物を言う)…しかしながら現在では搭載で きるミサイルの性能が航空戦の優劣を決めるようになってきており、戦闘機はその「運び屋」のような立場に成ってきています。

ちょっと面白くない言い方ですが、実際そうであることが実証されてしまっています。

(更新日:2002年3月24日)


目次へ戻る