第43回:最新のミサイル誘導方式

AMSTE

現在多用されている空対地動目標、対艦ミサイルの誘導システムはAGM-65をはじめとするTV/赤外線画像(※)、AGM-84ハープーン、そして AGM-88HARMのようなをはじめとするレーダー誘導/対レーダー誘導が代表的ですが、AMSTEは自己に赤外線シーカーもレーダーシーカーとも全く 違う、新世代の誘導システムを備えます。その特異な誘導システムは自己に一切のシーカーを持たず、唯一持つのはGPS/INS端末のみです。とはいえ、 GPSやINSだけでは動目標の補足はできません。

しかし、AMSTEにはJTIDSすなわち統合戦術情報分配システムデータリンクシステムのターミナルが組み込まれています。
JTIDSは戦域に存在するアメリカ及び同盟国の戦闘機,AWACS,J-STARS,攻撃ヘリ,イージス艦…果てには地上車両に至るまで、個々のユニットが持つ情報を全体に共有化するシステムです。詳しくはF-15Eストライクウイングで解説しています。

戦闘機やJ-STARSのGMT/IGMTレーダーモード(動目標探知)により補足された目標情報はJTIDSデータリンク内で共有化されます。 AMSTEが組み込まれた爆弾やミサイルはその情報から自己が捕捉するべき目標の現在の座標やベクトルといった情報を抽出し、自己のGPS/INSとあわ せて命中弾道を計算し弾体を誘導します。
現在すでに試験段階にあり、AMSTEを搭載したAGM-65マベリックは40mphで走行する地上目標に対して良好な命中弾を記録しました。将来的に対艦ミサイルやMk82,SDBのような通常爆弾に対しても搭載される予定です。

AMSTEを使用したミサイルや爆弾は高額なシーカー部を必要としないために安価な対戦車攻撃能力を得ることができます。また、レーザーやTVシーカーで目標を指示する必要が無いため、全天候攻撃を持ちます。
TV誘導や、レーザー誘導に比べ安価、かつ天候に左右されない事で、建造物など対静目標用の爆弾として主力の地位を獲得したJDAM同様、AMSTEは将来地上兵力に対する主力攻撃誘導兵器として君臨する可能性を大いに秘めています。

(※)AGM-65はレーダー誘導,レーザー誘導タイプもあります。

(更新日:2003年10月19日)


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