第109回:飛行機を撮ろう!3万円から始める飛行機写真撮影

コンパクトデジタルカメラという選択肢

飛行機を撮ろう!シリーズもいよいよ10回目です。
今回は「飛行機撮影を始めるなら、まず3万円の投資で十分。」というテーマで進めます。
一眼レフを一通り揃えるなら、どう安く見積もっても10万円はします。3万円とはどういうことでしょう。ここで一度原点に立ち戻ってみましょう。

シリーズ第1回目において、私は一眼レフを使い始める以前に所有していたC2100UZの写真を例に挙げ、「コンパクトデジタルカメラは、デジタル一眼レフとは比較にならないほど画質に劣る。」という旨の文を書きました。
10年以上前に発売された古いカメラの写真をコンパクトデジタルカメラの代表例として使ってしまったことを謝らなくてはなりません。今のコンパクトデジタルカメラは非常に高性能で、C2100UZよりも遙かに素晴らしい絵が出力されます。


清々しいコントラストが、なかなかに魅力的な写真ですが、このF-16は一眼レフで撮影されたものではありません。
撮影機材はCanon PowerShot S5 IS いわゆるハイエンドのコンパクトデジタルカメラで、2007年発売当時の価格は5万円台でした。2010年現在、同クラスのカメラが3万円で入手が可能です。
(PowerShot S5 IS)
3万円のカメラすらこれだけの写真が撮れるのに、これから飛行機撮影の趣味を始めようとする人にとって一眼レフに30万円を掛ける価値が果たして有るのでしょうか。モノの価値は人それぞれですから、その答えは一様では有りません。しかし、コンパクトデジタルでも飛行機撮影を本格的に始めるに十分な性能を有していると言えます。
今回はデジタル一眼レフと比較しながら、昨今のコンパクトデジタルの実力に迫りたいと思います。

なお、コンパクトデジタルの写真は、ページの趣旨に同意して頂いた上で、全てゆりあんさんに提供して頂きました。ありがとうございます。

広角側の撮影は、もはや一眼レフは不要

いきなりですが問題です。
今から同じ日、同じ場所、そしてほぼ同じ時間に撮影された被写体を3組、合計6枚の写真を見て頂きます。
どちらか一方がコンパクトデジタル、また一方が一眼レフで撮影された写真です。
一眼レフで撮影された写真は右と左どちらでしょうか。






以上です。
よく見ると一眼レフの方が色の階調が豊かなことに気が付きますが、こうして二枚を並べて比較し、目をこらして見なければ分からないレベルだと思います。 見ても分からない!という人もきっと居ることでしょう。
少なくとも、日中の条件の良い状況であらば、もはや地上展示の撮影において一眼レフに値段分のアドバンテージはない。と、言えるかもしれません。


この写真もコンパクトデジタルで撮影したものです。
もう、これだけの表現ができれば十分実用の域にあると言えるでしょう。



こちらの二枚の写真は2000年発売のC2100UZで撮影した写真。
今見ても決して悪くは有りませんが、明らかに表現力に数段劣ります。

飛行展示も十分撮れる。

続いて飛行展示の写真。

飛行展示中の大型爆撃機も十分な画質で出力されています。左のバルカンは僅かにブレているのが残念ですが、迫力有る瞬間を見事に切り取っています。


タイフーンの優れた機動性にオートフォーカスも追随できていますね。
こちらも一眼レフと見間違えそうな出来です。(かなり近いであろうことも、その理由と思いますが)


ブルーインパルスのスタークロス。
吸い込まれそうな青空が表現できています。やっぱ広角側はもう一眼レベルです。

コンパクトデジタルの無視出来ない欠点「タイムラグ」

以上、見てきたように、昨今のハイエンドのコンパクトデジタルカメラは非常に高性能です。もはや一眼レフを食うレベルに達していると言えると思います。
はじめて飛行機撮影をしようと思ったならば、3万円(〜5万円)のカメラを買うのが賢い方法です。
あえて一眼レフを揃える必要性は有りません。

性能に不足を感じたら、初めて一眼レフにステップアップすれば良いのです。

では性能不足を感じるときとは? 3万円で30万円のカメラと同じだけのパフォーマンスを発揮できる訳が有りません。全く同じ質の写真しか撮れないなら、だれも高い方のカメラなんて買いません。そこには「値段分の何か」が潜んでいるはずです。


「値段分の何か」とは、こういうことです。そう。コンパクトデジタルで戦闘機を撮るのは「難しい」のです。
ここまで見てきた素晴らしい絵は、どれも「良いとこ取り」であり、その陰には失敗も多いのです。
コンパクトデジタルは映像センサーが光をデジタルデータに変換し、液晶に表示するという構造上、どうしても「遅れ」が生じます。遷音速や激しい機動を行う戦闘機を追いかけるのは非常に困難です。また、シャッターのボタンを押してから実際にシャッターが切れるまでのタイムラグが長いのも大きな欠点です。シャッターチャンスを物にするには、実力と同時に「運」が重要となります。そして運が悪いと、上のトーネードECRのようにノーズが切れた写真になってしまいます。
オートフォーカスも近年は改善されたとはいえ、やはり一眼レフには劣ります。


スホーイ スーパージェット100
せっかく初めて見た飛行機なのにごく僅かにノーズが切れるとか、くやしいのうwwwくやしいのうwww
コンパクトデジタルは一度シャッターを切ると、次の撮影体制が整うまで真っ暗な画面になり、連写が事実上不可能の一発勝負です。


アチャー! これ、あと0.1秒早くシャッターが切れてれば誰もが唸るようなベストショットだったのに!くやしいのうwwwくやしいのうwww
その0.1秒を埋めるのが一眼レフなのです。

コンパクトデジタルの無視出来ない欠点「タイムラグ」

もちろん一眼レフでも戦闘機の機動を撮るのは簡単とは言えません。しかし、コンパクトデジタルよりは遙かに簡単です。 それが値段分の違いなのです。一眼レフは撮影可能な状況の幅を大きく広げられることが最大の違いと言っても良いでしょう。
ともあれ、これから入門しようとする趣味にいきなり大金を注ぎ込むのは賢明とは言えません。まずは3万円程度から様子を見て始めるのが良いと思います。状況次第では3万円でも30万円のカメラに匹敵する性能を有しているのはここまで見てきたとおりです。
カメラを選ぶ際は可能な限り液晶とシャッターのタイムラグが小さく、光学ズームが最低20倍以上のものをさがしましょう。レンズ径の小さい、ポケットにつっこめるようなサイズのカメラはダメです。飛行機向きではありません。
一眼レフとは異なり、NikonやCanonにこだわる必要はありません。好きなメーカーの気に入ったカメラで十分です。きっと、長く愛用できる友となってくれることでしょう。

飛行機を撮ろう!シリーズでは一眼レフを主体として基礎的なテクニックを紹介してきましたが、これらはコンパクトデジタルにもそのまま適用可能です。

あなたも飛行機撮影を始めませんか?

(更新日:2010年9月4日)

一眼・コンデジ撮り比べの答え
左:Canon PowerShot S5 IS
右:Canon EOS20D + EF18-55 USM 


目次へ戻る