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What's Krila Oluje?


この国にはクロアチア人しか住むことはできない。
私は老人から子供そしてセルビア人が育てた家畜にいたるまで綺麗に片づけるつもりだ。
私が神父の格好をしているからといって機関銃を乱射しないと思ったら大間違いだ。
私はクロアチアに反するものは何でも殺してやる。
それがたとえ7歳の少年であっても
汚れたセルビアの血が流れているものは浄化しなくてならないのだ。

映像の世紀 第10集 民族の悲劇果てしなく クロアチア人神父の証言より

まだ少年だった私は、この神父の証言に大きなショックを受けました。人生で初めて民族問題の難しさを知った瞬間だったのかもしれません。以降、クロアチアやセルビアと聞くと、この神父の証言ばかりが頭をよぎるようになっていました。そのクロアチア共和国は1991年に旧ユーゴスラビアから独立したバルカン半島の新興国で、独立戦争によって国土を荒廃させました。ですが近年では政情も安定し、外国のエアショーにアクロチームを派遣し、セルビア空軍の飛行機と肩を並べて飛行展示を行うようにまでになりました。やっぱ平和って素晴らしいですね。

クロアチア空軍のアエロバティックチーム、「クリラ・オルイェ」は6機のピラタスPC-9Mターボプロップ練習機を使用します。クロアチア空軍...?そんな小国の空軍なんて何が有るのかしらねえなあ、という方が殆どでしょう。クロアチアの主力戦闘機は20機にも満たないMiG-21で、2010年現在次期主力戦闘機を選定中です。

チームの発足は2004年7月23日に、クロアチアの港町ザダルで行われた「ヨーロッパ セイリング チャンピオンシップ」のオープニングセレモニーにおいて、記念フライトを行ったことに由来します。
編隊飛行がウケたのでしょう。その翌2005年の8月に「オルイェ(嵐)」と呼ばれていた軍と警察のイベントにおいて、再び祝賀飛行を実施しました。そして「オルイェ」での祝賀飛行の後、チームはその名を受け継ぎ、「嵐の翼 クリラ・オルイェ」として制式にアクロチームとして発足する事となります。当初は5機による編成で、2009年のシーズンより1機を追加した6機で行うようになりました。
外国で活動する際はチーム名を英訳した「Wing of Storm ウイングオブストーム」と名乗っています。

クロアチア空軍はPC-9Mを僅か20機しか保有して居ません。つまり、クリラ・オルイェは全クロアチア空軍の1/3ものPC-9Mを使用している事になります。もちろんアエロバティック専門のチームではなく、機体は練習機として使用されていますし、パイロットも教官から選別された兼任です。クリラ・オルイェは11飛行隊発足前の「戦技研究班」時代のブルーインパルスのようなものですね。(もっともクリラ・オルイェの飛行機には特別な改修が施されていませんが)
また、パイロットは皆30代中頃前後と比較的若いのも特徴です。普段はゼムニク空軍基地 第93飛行隊に所属しています。また、飛行機もパイロットにも予備がないため、5機によるプログラムも用意されているのも特徴と言えるでしょう。

教官と兼任、しかもターボプロップ練習機だとすると、クリラ・オルイェもそれほどレベルが高く無いんじゃないのか...?と疑問になるかもしれませんが、とんでも有りません。クリラ・オルイェは非常にレベルが高いです。
PC-9の性能を上手く発揮できており、編隊の間隔も狭く、さすが低速・小型のターボプロップ練習機ならでは!と思わせる演技で魅せます。低速とはいっても、展示プログラムにおける最高速度は550km/hですから、零戦に匹敵します。

使用機材 PC-9M 

ピラタスPC-9は、同社のターボトレーナーPC-7を原型に大幅性能向上を目指した発展型で、ピラタス社製の練習機としては、ホーカー・ビーチクラフトでのライセンス生産機(T-6 テキサン2)も含めると最多の700機以上を誇ります。

エンジンは零戦の「栄」とほぼ同等の950馬力ターボプロップを搭載しています。最高速度も零戦並みの593km/hを叩き出します。ちなみに自重も1781kgと零戦とほぼ同等です。つまり零戦でアクロをやるようなものですね(笑) PC-9Mも非常にすぐれた機動性を有しており、アクロ機として使うにも申し分有りません。 荷重制限は7.0 g - 3.5 gです。

逆転の発想をすると、PC-9Mのターボプロップエンジンを零戦に搭載すれば、航続距離は減じますが高々度飛行も可能な迎撃戦闘機に生まれ変わると言うことです。やったね、これで高オクタン価のガソリンも要らなければB公も怖くない!(違)

PC-9は、一見我が国のT-7相当の初等練習機に見えますが、多くの国ではアドバンスドトレーナー、すなわちT-4クラスの中等練習機として使用されていることが多いようです。クロアチア空軍においても、初等練習を終えたパイロットの卵達にとって二機種目の飛行機となります。本機での訓練を終えた後、戦闘機へと進みます。
PC-9のコックピットは完全グラス化+HUDを搭載し現代戦闘機のような設計を有していますが、皮肉なことにクロアチアの主力戦闘機はアナログチックなMiG-21ですから、笑えますね。

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