AAV-7

(PHOTO:USMC)
AAV-7はアメリカが開発した兵員輸送および上陸支援を目的とした水陸両用車である。 AAVはAmphibious Assault Vehicle(水陸両用強襲車)の略である。
アメリカは1950年代にLVTP5を採用、ベトナム戦争にも投入したが、1960年代に至って性能に見劣り始めた。
そこで、1964年3月に海兵隊により次期水陸両用兵員輸送車の開発が要求され、それに応じて提出されたいくつかの案の中よりFMC社の案が採用が決定された。そして1965年1月に開発および15輌の試作車輌の製作契約が締結された。そして1966年2月より基礎開発がスタート、1967年には最初の試作車LVTP12が完成し、同年9月までに契約した試作車15輌全てが完成した。LVTPX12水陸両用兵員輸送車として海兵隊の手で1969年9月まで運用試験が実施され、試作車は海兵隊の要求性能を十分に満たしている事が確認された。1970年には本車はLVTP-7として制式化され、同年6月に米海兵隊は942輌の量産を発注した。量産車は1971年8月より海兵隊への引き渡しが開始され、翌1972年3月からLVTP-7を装備する部隊が作戦可能状態になっている。
LVTP-7と言う呼称はこれまで使用してきたLVTPシリーズの1つであることを示しているが、その後1985年に現在の名称であるAAV-7に変更されている。ただし米国以外の使用国では、LVTP-7の呼称のまま運用している場合が多い。LVTPはLanding Vehicle Tracked Personnel(装軌兵員上陸車)の略である。

AAV-7の車体はアルミ合金の溶接構造で、勿論水陸両車である為、車体は水密型で浮航性を持っている。車体の装甲は小銃弾に耐える一般のAPCと同程度である。車内内部の配置は、前部左側には機関室、車体前部左側に操縦席、その少し後ろに車長席、その反対側には1名用銃塔が搭載されている。1名用銃塔はM2 12.7mm重機関銃の後継として開発されたM85 12.7mm重機関銃を装備しており、IFV程とまでは行かないが、ある程度の戦闘能力を与えられている。ちなみに改良型のAAV-7A1の銃塔からはM85はM2に更新されており、元々、M2の後継として開発されたM85の後継がM2なのは何とも皮肉な話である。

車体中央後部からは兵員室となっている。兵員室内部は3列のベンチシートが設置されており、25名の完全武装の海兵隊員を収容する能力を持っている。兵員の乗降は後部のランプ・ハッチを使用して行う。ちなみに内部はエアコンが設置され、世界中を股にかける米海兵隊員の負担軽減に一躍買っている。ちなみに、水密構造は取ってはいるが本車には対NBC装置は設置はされてはおらず、あるのは文字通り“エアコン”のみである。さらにAAV-7は寒冷地用キットを用いる事により、外気温−54℃でも行動可能となっている。

本車の水上浮航は後部のウォータージェット2基を用い、もしそれが使用不可なってしまった場合でも、履帯を回転させる事でも可能である。ちなみに本車は3mの波までなら水上浮航が可能となっている。
(PHOTO:NATO)
派生型は指揮車型のAAVC-7/LVTC-7、回収車型のAAVR-7/LVTR-7が開発され、配備されている。さらに、地雷処理車型のLVTE-7も制式採用自体はされてはいたが、生産は見送られている。そして105mm砲を装備したLVTH-5自走砲も計画のみされ、さらに余剰となっていたシェリダン空挺戦車の砲塔の152mm砲を105mm無反動砲に換装した砲塔を積んだ火力支援型のLVTEX-3もあった、こちらは試作車が1輌製作されたが採用までには至らなかった。

AAV-7の生産が終了した1977年3月より米海兵隊は改良型の開発を指示、試作車14輌を経て、改良型としてAAV-7A1が完成した。1981年からはの新規生産の発注がされ、AAV-7A1が294輌、AAVC-7A1が29輌、AAVR-7A1が
10輌生産された。そして、これに並行して既存のAAV-7が853輌、AAVC-7が77輌、AAVR-7が54輌が寿命延長の為に改修されている。後者の制式名称もAAV-7A1で、どちらもAAV-7A1となっている。両者の区別の仕方は、ヘッドライトを納めるくぼみが上方へ移動し、丸形から四角形になっている事である。現在の米海兵隊ではA1型が標準型となっている。

AAV-7A1では、車体寿命の延長、改良型エンジンへの換装、サスペンションの強化、車長用キューボラの大型化、パッシブ式暗視装置の増設、消火装置の改善、発煙弾発射器の設置、波形の増設装甲の設置が可能になっている。増加装甲には波形装甲以外にメッシュ状の増加装甲も製造されたが、こちらは試験段階で終わっていると見られる。

1986年からは、40mmグレネードランチャーおよびM2 12.7mm重機関銃を装備し、装甲の強化がされた武装強化型の銃塔への更新が開始されている。この銃塔は現在では殆どのAAV-7に搭載されている。

AAV-7は米海兵隊の軍馬として多くの戦闘を経験している。AAV-7は先のイラク戦争にも投入され、2004年のファルージャの反米勢力の掃討戦にも参加している。イラクでのAAV-7は米海兵隊が保有する唯一の装軌車輌として重宝され、バリケードの破壊や市街地戦での歩兵の盾、さらには兵員室を活用して前線への物資の輸送任務などにも用いられている。だが大型車体で有る為、対戦車ロケット砲などの的に成り易く、その餌食になってしまった車輌もある。
(PHOTO:USMC)
AAV-7の輸出は複数の国に対して行われ、輸出向けのAAV-7は367輌が製造されている。中でもアルゼンチンでのAAV-7は1982年のフォークランド紛争に参加し、フォークランド島占領の急先鋒の役目を果たしている。この時、アルゼンチン海兵隊のAAV-7は対戦車ロケットにより1輌撃破されている。最近では、台湾が現在運用しているLVTP-5A1水陸両用車の後継として、米海兵隊の中古のAAV-7A1の改修型RAM/RS を54輌購入する計画を発表している。

AAV-7は誕生からすでに30年たっており、すでに複数のAAV-7が退役している。そして2005年からは、AAV-7の後継のAAAVが生産開始となり、2015年までに1013輌を製造し、現行のAAV-7を更新する計画である。米海兵隊以外ではまだまだ現役を退く事は無いだろうと思われる。どちらにしても、この海兵隊の軍馬は少なくとも十数年は世界中で使い続けられていく事だろう。

性能諸元

名称 AAV-7 AAV-7A1
製造 FMC社(現ユナイテッド・ディフェンスLP)
主任務 兵員輸送およびその支援
全長 7.94m
車体長 7.5m
全幅 3.27m
全高 3.263m
戦闘重量 22,838kg 23,911kg
出力 デトロイト・ディーゼル8V-53T
2ストロークV型8気筒水冷ディーゼル400hp
カミンズVT903-T400
4ストロークV型8気筒水冷ディーゼル 400hp
速度 64.37km/h(路上)
13.52km/h(水上)
72.42km/h(路上)
13.2km/h(水上)
燃料搭載量 647L
路上航続距離 482km
主武装 M85 12.7mm重機関銃x1
乗員 3+25名
実戦配備 1972年 1977年

派生型

●LVTP-7A1/AAV-7A1水陸両用強襲車

LVTP-7/AAV-7の各部改良型。下の写真のAAV-7A1は波形増加装甲を取り付けている。
(PHOTO:USMC)

●LVTC-7/AAVC-7指揮車

銃塔を撤廃して、兵員室に無線、地図板やデスクを増設し、指揮能力を装備させた指揮車輌型。

●LVTR-7/AAVR-7回収車

銃塔を撤廃し、車体右側に最大4.3tの吊上能力を持つ大型クレーンおよび22tの牽引能力を持つウインチを増設し水際での故障車や損傷車の回収能力を装備させた回収車型。内部には修理用機材や回収機材の操作パネルが装備されている。

●CATFAE地雷処理車

兵員室に対地雷用の燃料気化爆弾の射出装置を備えた地雷処理車型。搭載される対地雷弾は無誘導で使用時は車長が操作パネルによって信管をセット後、発射チューブ基部の射出用モーターにより自動射出される。射程は500mで幅40m・長さ300mの地雷原を啓開できるとされてる。搭載される対地雷弾は前列3発・後列4発の3セットで計21発搭載される。 CATFAEとはカタパルト発射式燃料気化爆弾の意である。

配備国

●アメリカ

AAV-7(派生型含む) 1323輌

●イタリア

AAV-7 24輌
AAVC-7 1輌

●スペイン

LVTP-7 16輌
LVTC-7 2輌
LVTR-7 1輌

●韓国

LVTP-7 53輌
LVTC-7 5輌
LVTR-7 3輌

●タイ

LVTP-7 32輌
LVTR-7 1輌

●台湾

AAV7-A1 RAM/RS 54輌 (予定)

●アルゼンチン

LVTP-7 19輌
LVTC-7 1輌
LVTR-7 1輌

●ブラジル

LVTP-7 16輌

●ベネズエラ

LVTP-7 9輌
LVTC-7 1輌
LVTR-7 1輌

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