ｆｓ９８

～第７章　戦闘国家～

予定飛行時間：３時間３０分
実際飛行時間：３時間３０分(事件発生の為)
飛行時刻　　　：１７００～１８３０(インド標準時)
実際飛行時刻：１７００～１８３０(インド標準時)
飛行距離　　　：１６０７海里（３０４５Ｋｍ）
巡航速度　　　：３３０ｋｔ（６３０Ｋｍ／ｈ）
燃料消費　　　：６０００ガロン（６６％）
天候　　　　　　：晴天
風　　　　　　　：微風

・ブリーフィング
インドよさらば、１９９９年１２月某日、今年のラストフライトになるだろう事を予感しながらクルー全員Ｐ－３Ｃに乗りこむ。この後に起こる事件も知らずに…海岸線に沿って飛びクウェートまで飛行する。フライトプランは下記の通り、多少の雲と風があるが問題無かろう。

くうぇいと

・フライト
上空に上がると、インド有数の都市ボンベイがいかに大規模な街だという事が分かる。滑走路延長上を真っ直ぐと上昇するとそこはもうすでに海岸線、右旋回をして海岸線に沿い上昇を続ける。例によってあとはもうオートパイロットで十分だ。
インド～
ボンベイ

コーヒーを飲みくつろぐことにした。インドの田園地帯が続くのどかな風景、ガンジス川の流れのように、この国は全てがゆったりと時間が流れているように思えてならない。物乞いあふれるインドの都市郊外よりもこのような辺地の方が私は好きだ。とても核実験を行ない長期にわたる紛争を抱えている国とは思えない。まもなくパキスタン領空に入る
いんどみたぶる
インド領空

数分パキスタン領空を飛んでいると…ミグだ！尾翼に赤い星のマークが目立つ戦闘機が２機、パキスタンのスクランブルだ。機種は…Ｆ－５にそっくりなMiG28に違いない。通信が入ってきた｢貴機はパキスタン領空を侵犯している。我々が誘導する。着陸せよ。｣マッハで飛べ機動性の高いMiG28を振り切る事はまず不可能なので従うことにした。進路をカラチに向けた。カラチ国際空港のある市街地に到達した時はすでに日没を迎えており、空がだいぶ暗くなっていた、ダイレクトアプローチで着陸進入し、いつも通り難なく接地。誘導していた２機のミグも後ろに続き２機ともに着陸した。駐機した後に武装した兵に連れられ取調べを受ける事になった。
からち
夜間着陸

戦闘国家２部

・ブリーフィング
カラチ国際空港～クウェート国際空港
年末年始、P-3Cのソフトウェアに2000年問題が発生し、その交換作業に手間取り、その新型ソフトウェアにはGPSナビゲーションシステムが欠落していたせいもあり、飛行再開に非常に時間がかかってしまった。フライトプランは以下の通り

・フライト
朝日が昇る。パキスタン在中はや３ヶ月、現地にも愛着がわいてきたがまもなく出発しなければならない。天候は雲一つない青空が目的地のクウェート国際空港まで広がっている模様。P-3C対潜哨戒機は久しぶりの飛行にキーンと高いエンジン音をうならせて離陸のときを待つ。現地時間朝６時、パキスタン首都カラチ国際空港より小国クウェート国際空港に向け飛び立つ準備が整った。

スロットルを倒し、いつも通り出力を96％でランウェイ07Lを滑走する。久しぶりにP-3Cを操縦したので、真っ直ぐ滑走しようと若干ながらラダー補正する際に過剰修正を行なってしまう。明らかに腕が鈍ったようだ。離陸上昇ギアアップ。場周出発経路トラフィックパターンに入るフラップアップ。ベースレグで離脱しGPSナビゲーションを利用したオートパイロットに切りかえる。あとは自動で23000ftの巡航高度に達し330ktで飛行する。

現在６時５分、カラチの街はまだ起きてはいない。

カラチの街を抜け海岸線沿いに飛ぶわけだが、前年に要撃してきた機か二機ほどミグが護衛についていた。イランとの国境まで護衛してくれるらしい。しかしあっという間にイラン国境、二機のミグは翼を振り挨拶するかのような動作を行なった後、旋回し去っていった。
左手側にインド洋、右手側には砂漠が広がるいかにも中近東らしい風景が続いた。P-3C現在イラン上空を航行中、イランと言えば自国の航空会社のエアバスを米軍のF-14と勘違いし地対空ミサイルで撃墜すると言うアホをしでかした国だ。どう見ても数百人乗りのエアバス旅客機とグラマンの艦上戦闘機は似ても似つかぬ。インドに入ったあたりから物騒な国続きで気の休まる暇もない、ただ唯一の楽しみはあらゆる場所の二つとない景色だ。ずっと見ていても飽きない。

砂漠の国、イラン

おや？いつのまにか空が完全に明るくなっている。もうペルシア湾の入り口だ、パキスタンカラチを離陸してからすでに1時間半経過している。西へ西へと時速約600km以上で飛行しているわけだから太陽の昇りは通常よりもゆっくりなはずだ。P-3Cの時計は７時３０分を指しているが、現地時間だとまだ７時前ぐらいだろう。数千年前よりこのペルシアには「燃える水」が大量に有る事が知られている。燃料として用いられるのは百数十年前からだが現代において無くてはならない物となっている。しかしこの燃える水が紛争を引き起こし人間の血が多量に流れたのも事実、敬虔なイスラム人が多いこの地、原油さえ産出しなければ誰も見ぬきもせず、血も流さずにすんだであろうに…その原油も現在の消費量のままだとあと40年で尽きてしまう、未だ原油に代替する新エネルギーを完全には手にしていない。。

ペルシア湾

このままアラビア半島のペルシア沿岸を飛び、クウェート国際空港にストレーティングアプローチを仕掛ける予定、現在はアラブ首長国連邦上空、このあたりは複数の王国が集って一つの連邦国家が形成されており、３大始祖と呼ばれる全世界全てのサラブレッドの先祖である｢ダーレーアラビアン｣｢バイアリーターク｣｢ゴルドフィンアラビアン｣の牡馬３頭のルーツもここからで、世界最高の賞金が出るレース、ドバイワールドカップもこの地で行なわれる。砂漠と海に囲まれた土地に美しい大都市が有るのも大きな特徴だ

さて、飛行前にインプットした通りにP-3Cが降下を開始する。あとは真っ直ぐ下りるだけだ。ここからが飛行機を操縦していて最も重要で難しく、かつ面白い仕事である着陸に入る。今までオートパイロット着陸を試してみた事は無かったのでに試してみる事にした。現在の高度は１万ft、VOR1をクウェートランウェイILS周波数にセット。オートパイロットマスタースイッチチェック、アプローチスイッチオン、対気速度の設定を１４０ｋｔに、フラップをダウン、ギアダウン、操縦桿に手を軽く添え、もしもの場合に備える。高度５００ｆｔ、まもなくクウェート国際空港、｢ボーダーラインクリア｣とＧＰＷＳが注意を発す。「テン..............ファイブ、フォー、スリー、ツー、ワン、コンタクト。」タッチダウンし減速。

完全オートパイロット

タクシーウェイに入りエプロンで駐機、パーキングブレーキセット。フラップアップチェック、ギアレバーチェック、４番エンジンスロットルローアイドルポジション、カットオフ。ヒューンと低い音がだんだん小さくなりプロペラが停止する。続いて３番エンジンカットオフ。２番１番もカットオフしプロペラが停止する。が、エンジンはまだヒューンと音がしている、ターボプロップのP-3Cはジェット噴射でプロペラを回しているのでピストンエンジンと違い停止するのにはかなり時間がかかるのだ。アビオニクスマスタースイッチオフ、全ライトオフ、バッテリー電源オフ。これでようやく駐機が完了。なお、エンジン始動からカットオフに関してのチェックリストは今回の飛行日誌と同時に公開したのをぜひ見て欲しい

・デブリーフィング
年末年始にどたばたしてた上にFS2000を導入しGPSナビゲーションシステムが変わってしまったので、再開が遅れてしまった。パキスタンからクウェートへのフライトだったのだがこの辺はホント砂漠ばっか…後もう一息でヨーロッパに入るのでそこからがまた風景が楽しみだ…次回はトルコイスタンブール。旧オスマンイスラム大帝国の首都だ。

ＢＡＣＫ