空対空兵装

【幻の兵装 GAU-7/AIM-82/AIM-95】

GAU-7はF-15に装備する事を目的として設計された25mm6砲身機関砲(ガトリングガン)である。
米国製戦闘機の標準的機関砲であるM61A1 20mm6砲身機関砲は欧州やソビエトの機関砲に比較すると口径が小さく、連射速度こそ速いがやや威力不足であった。そのためM61A1に代わりF-15に搭載する事を目的とし1960年代後半に開発が開始された。
GAU-7の最大の特徴は薬莢を持たず、弾そのものに発射薬を持つケースレス(無薬莢化)弾を発射する事であり、発射精度の向上、弾丸の軽量化を狙った野心的新技術が投入された。
しかし、ケースレス化の利点と逆方向の問題が多発し弾装ドラムやベルト給弾など機構上の問題やケースレス弾そのものの開発に失敗。
GAU-7の開発には1億ドルの予算が投入されていたが、試作型が辛うじてF-15に搭載されたのみで、1974年技術的に困難であると結論付けられGAU-7の開発は中止、F-15はM61A1バルカンを装備する事が決定された。

AIM-82もF-15に装備する事を目的として設計された短射程オールアスペクト・オフボアサイト赤外線誘導空対空ミサイルである。
「ミサイル戦から格闘戦戦闘機への回帰」に従い設計されたF-15はドッグファイトに勝つために必要なものは急旋回を可能とする広大な主翼、急旋回のエネルギーロスを防ぐ強力なエンジンを持つに至った。
ミサイル戦から格闘戦戦闘機への回帰とは言ってもベトナムの空でも空中戦の主力はサイドワインダーであった。すなわち、旋回を可能とする広大な主翼、急旋回のエネルギーロスを防ぐ強力なエンジンに加え、サイドワインダーを凌駕する高命中率・高信頼性の新たな短射程空対空ミサイルを搭載する事によりリスクは最小限に抑え、MiG-21に対するキルレシオは955:1に達するであろうと試算された。
1970年にAIM-82の仕様がまとめられヒューズ、フィルコ、ジェネラルダイナミクスに対し提案書の納品を命じた。
しかしF-14に搭載するために海軍により発注・開発されていた類似した性能要求を持つヒューズAIM-95が先行して開発が進んでいたため、AIM-82の計画は破棄され空軍も同ミサイル開発に参加する事となった。
AIM-95A Agileと正式名称が付与され、発射試験まで行われたが開発費およびユニットコストの高騰により最終的に1975年には計画は破棄された。

955:1のキルレシオが試算された当時は、楽観過ぎるその数値に「極東、欧州、本国に3機あれば十分だ」と皮肉を込めた批判が行われたが、さらに皮肉な事に同種のAIM-9L/Mを装備するF-15は100:0以上というキルレシオを実現しており、比率に於いてそれを上回っている。

【AIM-9/AIM-7/AIM-120/M61A1】

AIM-9サイドワインダー、AIM-7スパロー、AIM-120アムラーム、M61A1バルカン、これらの兵装はF-15Eストライクウイング-兵装-において記述済みであるので概要は省く。F-15とF-15Eによる差異は殆ど無い。
F-15は右翼の付け根にM61A1の砲口を持ち、ドラム弾倉およびベルトに最大940発のPGU-28弾丸を装備可能である。F-15Eは512発に減数している。



機関砲口は右翼付け根付近にあいている。機関砲口後方に発射ガス放出および放熱口が見られる。なお、コックピットやや後ろの上面の四角形の穴と、キャノピー後端下の丸い穴はアビオニクス室の放熱口。円形の穴は右舷側のみ開いている。F-15J改ではこの冷却口はなくなる。

空対空ミサイルは胴体側面に最大4発のAIM-7及びAIM-120を装備し、翼下に最大4発のAIM-9及びAIM-120を装備する事ができる。

写真は左翼からAIM-9×2 AIM-7×4 AIM-120×2の8発の空対空ミサイルに加え3本の610ガロン(2309リットル)増槽を装備するフル装備が施されている。


F-15は胴体下、主翼下に最大3本の610ガロン増槽を装備する事ができる。多くの戦闘機が増槽を装備した場合、空対空ミサイルの搭載数に干渉を及ぼすのに対し、F-15にはそのような心配は必要無く、小さいながら利点である。

F-15Eストライクウイングを含むサイト情報や書籍などではAIM-7やAIM-120の射程距離はおよそ50km前後であるが、実戦におけるこれら中射程ミサイルの射距離は10-20km程度であり、これ以上の距離での交戦はきわめて稀であり、発射しても命中は殆ど期待できない。

【ASM-135 攻撃衛星を落とせ!】

本ASM-135を空対空ミサイルの範疇に含むのは疑問であるが、ソビエトの対人工衛星用攻撃衛星を破壊するために開発された対衛星ミサイルである。対衛星兵器Anti-SATellite weapon.を略したASATと呼ばれる。2段のロケットを持ち、頂点部のMHVと呼ばれる弾頭部で構成される。MHVは赤外線シーカーと姿勢制御スラスターを持つ。なお弾頭はエネルギー衝突式であり炸薬は持たない。
F-15イーグルはASM-135の発射母機として選定された。あらかじめ空中待機した爆撃機から発射する方式や、地上固定式、攻撃人工衛星発射式も検討されたが、およそ2万メートルの発射高度まで2分少々で上昇できる極めて高い上昇力が買われ、F-15に装備、運用することがもっとも高効率である事が決め手となった。
ASM-135を搭載したF-15Aは指令を受け指定の空域まで飛行し、空軍宇宙コマンド(AFSPC)からのデータリンクによるHUDへの表示及び音声での指示を受け、標的衛星に正対する形にハイレートクライムを実施し高度2万-2万5000mまでズーム上昇。そのままの姿勢でミサイルを分離しF-15は帰投する。後はASM-135自身で自律誘導が行われる。
1985年9月13日、ASATを装備するF-15A(77-0084)により初の実弾試射が行われ高度555kmの軌道上にあった標的衛星を破壊した。戦闘機がミサイルにより人工衛星を破壊した史上唯一の例である。実験は成功し、射高800kmにも達するとされたが、本ミサイルが実用されることは無かった。

詳しくはWeapons Free! ASM-135 ASAT項を参照されたい。

【搭載兵装一覧】

パイロン 1 2 3 4 5 6 7 8 9
AIM-9
シャフリル2
パイソン3
パイソン4
パイソン5
AAM-3
90式空対空誘導弾
AAM-5
04式空対空誘導弾
AIM-7

AIM-120

ダービ−

AAM-4
90式空対空誘導弾


500ポンド級爆弾



○○

○○

○○
○○



610ガロンタンク
AN/ALQ-131等ECM
F-15 兵装搭載例
CAP AIM9
AIM9
AIM7

AIM7

AIM9
AIM9
CAP2 AIM120
タンク
AIM9
AIM120

タンク
AIM120

AIM9
タンク
AIM120
F-15B/D
(機内ECM無し)
AIM9
AIM9
AIM120

ALQ131
AIM120

AIM9
AIM9


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