自衛隊航空祭の問題点


今回は第57回センスのない自衛隊ウェブサイトの続編版。
私は航空祭が大好きです。年に数回、国内の航空基地へ足を運びます。その中で私自身が見た、体験した航空自衛隊が主催する航空祭での問題点を指摘します。
57回同様、自衛隊に悪意を持っているのではなく、「改善して欲しい」という思いがあると言う事を勘違いされないために先に述べておきます。



2004年の新田原航空祭。新田原と言えば、飛行機好きに広く知れ渡っている南側駐車場でしょう。
私は朝一番の航空祭特別便のバスに乗り基地に到着しました。しかしそこは、目的としていた南側駐車場ではなく北側のエプロン、つまり航空祭会場でした。
どうやら、南側駐車場には基地内で運行されているシャトルバスを利用しなければならないようです。
まだ十分な時間があったのですが、不慣れな土地ですし、できるだけ早めに南側へ移動して展示飛行に備えようとバスの停留所を探しはじめました。
しかしバスがたくさん駐車している場所をいくら探しても、それらしきものはありません。
およそ10分ほど探しましたが、このままさまよっても仕方無いので近くにいた自衛官に尋ねる事にしました。

およそ5mの距離にいた自衛官と目が合い軽く会釈し「すいません。」と、声をかけました。
しかし自衛官は明らかに顔をしかめた後、首に下げてるカメラを構えて基地の外から来訪してきたバスから降りてくる客を撮影しはじめました。
なるほど。広報写真か何かにするのに撮影しているのだなと思い、自衛官の挙動に不振を覚えつつも撮影が終了するまで待つことにしました。

撮影が終わったのか、自衛官がカメラを構えるのをやめました。
再び「すいません。」と声をかけたのですが…
しかし、その自衛官はこちらのことに気が付いているはずなのに、それを無視して歩き始めました。

おいおい、コイツなんで逃げるんだ。と思いながら並んで歩き
「駐車場行きのバスはどこから出ているのでしょうか?」と、尋ねました。

自衛官がやっと口を開きました。
「くうばくから来ているので…ちょっと…分からないです」
と、言いつつ、「空幕」と書かれている腕章を見せてきました。

なるほど。空幕から来たなら分からないかもしれません。
「あ、そうですか、失礼いたしました。」
と挨拶し、別の自衛官に尋ねることにしました。



さて。ここで本題に入ります。

この自衛官は「くうばく」と言い、「空幕」と書かれた腕章を見せることによって私(つまり一般客に)に分からないと言う事の理解を求めてきたようですが、一般的に「空幕」という組織が広く認知されているとでも思っていたのでしょうか。
私はたまたま航空自衛隊に多少なりとも興味があるため「くうばく」から来ていると言えば東京の防衛庁から来たのだなと分かりました。しかし私でなければ空幕ってなんだ?食べられるのか? と、思われるのがせいぜいでしょう。

私(客としての)の立場から見れば「自衛官」であるから道を尋ねたのであって、尋ねる側にとって、「空幕弁当」を売りに来ようが、なんであろうが所属などというこれほど無意味なことはありません。
基地所属であっても、空幕の所属であっても同種の制服を着ている以上「航空祭に関わっている自衛官である」という事実は何ら揺るぎません。
デパートにおいて、制服を着ている店員に紳士服の売り場の場所を聞いたのに、帰ってきた答えが「バイトですので分かりません。」「渉外部のためわかりません。」こんな言い訳されたらお客はどんな気分になるでしょうか。考えるまでもありません。
このような場合、分かる人から聞いてくる。分かる人の所へ誘導する。といった対応をすべきであって、「○○だから分かりません」という返答はサービスを提供する側にとって最もしてはならないタブーの一つです


あたりまえですが、自衛隊は国と国民の安全と平和を守る組織であって、お客様を迎え入れてお金を稼ぐ組織ではありません。
ですからこの自衛官が一般社会における「接客の常識」を知らなくても無理は無いかもしれません。
しかし、それが許されるのは通常の任務にあたっている時のみです。
駅に宣伝ポスターが貼られ、バスには広告が載り、広くお客様を迎えて、航空自衛隊の印象と認知度を高めるという航空祭では「接客」こそが最大の目的になります。
そのような航空祭において先にあげた例のような、別の場所から来たからと言って挨拶しても返事すらせず、明らかにめんどくさいことになったという態度を表に出して、挙句の果てに「空幕なので分かりません」などという最低の対応をする係員は、逆に自衛官の印象を悪くする因子であるわけですから、本来あってはならない存在です。

また、別の基地での話ですが外来機が帰還する、いわゆる「蛍の光フライト」中、ローラー作戦でエプロンからお客を追い出す中、ある自衛官の集団が「ほらほら、早く帰ってくれないと片付け終わらなくてメシが食えないだろ。」と会話していたのを聞いてしまいました。言語道断です。どうしても愚痴りたいなら、そーいう会話は客のいないところでする物です。
客に不快感を与えても売り上げに響かないという危機感の無さが生産性が皆無であるお役所仕事らしい発言とも受け取れます。1つの不快は100の素晴らしいフライトを駆逐します。


警備などにあたる基地の担当者はもとより、広報活動などで現地に入る幕僚も含め、接客とは何たるか、新人アルバイターへのレクチャーのようなものを1時間、いや30分でも隊員に教育を施すべきではないでしょうか?
困った顔をして「空幕から来ているので分かりません」とお客に向かって言い放つのは明らかに教育不足から出た珍答であり、そうでもしないと同じことは永久に繰り返され、自衛官全体のサービスに対する質は一向に改善しません。

30分や1時間はとても僅かな時間ですが、その効果は覿面と効いてくるでしょう。



57回のセンスの無い自衛隊ウェブサイトでは、現役の任期隊員から佐官までたくさんのご意見をいただきました。
また、jda.go.jp(防衛庁)からはMASDF全体で毎日数千ページビューの来訪がありますので、いずれ「空幕の弁当屋」の方にも見ていただけるものと期待してこのページを執筆しました。
もし、航空祭における自衛隊のありかたに一石を投じることができるのならば、これほど幸せな事はありません。

また、自衛官だけではなく、航空祭に足をはこぶ飛行機ファン現地自衛隊の指示に従い、
開門ダッシュ、脚立の使用、エプロンでの喫煙、これらを遠慮してくださいとアナウンスがあるのに何の罰則も無いからと聞く耳持たずに知らん振りするのは最低の行為ですのでやめましょう。
…次回は自衛隊ではなくマニアに視点を向けます。