OH-6D操縦訓練


OH-6は本来アメリカ製の汎用ヘリコプターヒューズ500を自衛隊用に生産したのもであり、ヒューズ500は世界各国、軍・民問わず、自家用ヘリから対戦車ヘリとしてまで、あらゆる目的に使用されている、数千機もの生産数を誇る傑作ヘリコプターです。
陸上自衛隊のOH-6Dは観測任務に使用され、観測任務とは戦線の偵察、および攻撃判定を行います。余談ですが、湾岸戦争時、イラクのヒューズ500はホバリング中にF-15Eの投下した精密誘導爆弾の直撃を受けて撃墜されています。

ヘリコプターの操縦はエアロダンシング4における最大の壁です。ある程度の操縦技術を身に付けるまで何機ものOH-6を大破させてしまうかもしれません。しかし、一度コツをつかんでしまうと今までの失敗が何であったのだろう?と、思えるようになります。
さながら自転車に初めて乗れたときのように。


ヘリコプターの操縦は、ピッチ(機首の上下)、ロール(左右回転)を制御するサイクリックスティックと、ヨー(左右の揺れ)制御を行うアンチトルクペダルと、ローターの発するトルクを制御するピッチコレクティブで行います。

それぞれ名前が長いのでサイクリック、ペダル、コレクティブとして説明します。


基本的に飛行機(通常の固定翼)というものは、スロットルによるエンジン出力の調整で上昇、下降を制御し、機首ピッチの上げ下げで速度の制御を行います。エアロダンシングや某戦闘機シューティングのような、莫大なエンジン推力を持つ戦闘機が主体のゲームをプレイしていると、速度の調整はスロットル開閉、高度の調整はピッチ上げ下げで行うように誤解しがちですが、その考えは基本的に誤りであるといえます。

分かりやすい例としてグライダー(滑空機)について考えてみます。
グライダーはエンジンが無いため、自力で滑走し上昇するなどということは当然できません。ですからセスナ機等に牽引されて大空に飛び立ち、予定されていた高度に到達したら切り離されるのです。

基本的にグライダーは切り離された高度が最高点であり、エンジンの無いグライダーはその高度よりも高く上昇することはできません。
では、速度の調整はどうすれば良いのでしょうか?
簡単なことです。ただ機首を下げれば良いのです。地面に激突するか、速度超過でバラバラになるまで、いくらでも加速することができます。
逆に減速する場合は逆に機首を上げます。機種を上げると減速と同時に上昇しますが、機体の揚力は速度の2乗に比例するため、一時的な上昇にすぎません。それでも無理に機首を上げたままにすれば機体は失速し、より多くの高度を失うことになります。

T-3のような動力機で、エンジン出力を保ったまま機種上げをした場合、一時的に上昇する事は可能ですが、減速したことにより揚力が失われ上昇はストップ。結局水平飛行に戻ってしまいます。

…さて、前置きが長くなってしまいましたが、飛行機にしろヘリコプターにしろこの原則は不変です。さらには空中戦機動によるエネルギー管理にも繋がるので、覚えておいて損は無いでしょう。

■高度の制御

ヘリコプターは、通常スロットルの制御を手動で行いません(理由は後に説明します)。そのため出力の調整はコレクティブで行います。以降、出力のことをトルクと呼びます。

コレクティブはメインローターのブレードの空気に対する迎え角を舵取りするためのものです。コレクティブを下げきったた状態ではブレードが水平に空気を切りさくのみでトルクは0%、推力は発生しません。コレクティブを上げるとブレードに迎え角が付く事によりにトルクが強くなって推力が発生します。
トルクを増加させ推力が機体重量を上回ったとき、ヘリコプターは上昇します。


ただし、ブレードのピッチを増加させるとブレードにぶつかる空気量の増加により空気抵抗が強くなるため、ローターとそれに繋がるエンジンの回転数が落ちてしまいます。ローターの速度が落ちてしまうと、速度の2乗に比例する揚力は失われ、結局は上昇しなくなりホバリング状態になります。
しかし、ヘリコプターはすぐに減少した速度を補うため自動的にスロットルを増加させて一定の回転数を維持しつづけようとするので、継続した上昇が可能になります。

トルク計と燃料計の間にあるエンジン回転計の表示はほぼ120〜119%のあたりで震えており、トルクを上げると一瞬下がり、トルクを下げると一瞬上がり、すぐに元に戻るのにはお気づきでしょうか?
これはエアロダンシング4のヘリコプターはトルクによる回転数の増加、減少を再現しているためです。

■姿勢の制御

サイクリックを傾けると動かした分量に従ってメインローターが同じ方向に傾きます。ローター方傾くと揚力分布が崩れて傾いたほうの揚力は減少し、反対側の持ち上がった側の揚力は増加します。つまり、サイクリックを前に倒せば前方の揚力が小さくなり、後方の揚力が増加するため、機体は前に傾きます。左右後方向も同様です。
揚力のバランスを崩して姿勢を制御するわけですから、トルクが0%状態ではサイクリックを動かしても機体は反応しません。
参考に着陸している状態で、外部視点にしてサイクリックを動かすことによりローターがどう動かを実際に確認してみてください。

ヘリはハリアーと同様、サイクリックで機体を傾けた方向へ加速します。減速したい場合は逆方向へ機体を傾けます。このあたりの操作はハリアーと同じですので、ハリアー操縦法をご参照ください。

■アンチトルクペダルとドリフト

メインローターがトルクを発生させると、その反作用で機体はローター回転とは反対の右方向にぐるぐる回転してしまいます。その回転を打ち消すためのものがテールローターです。

機首が一定の方向に保たれている場合、トルクとテールローターの推力が均衡しているといえます。テールローターの推力はアンチトルクペダルで行い、左足を踏み込めばテールローターのブレードピッチが大きくなり、推力が上昇するため、トルクに打ち勝ち機体は左回転をはじめまます。
逆に右に踏み込むと推力が減少するため、トルクが勝ち右方向に回転します。
トルクはコレクティブにより増減するわけですから、それに応じてペダルの操作を行わなければなりません。

また、テールローターは横方向に推力を発生させるので、トルクを打ち消すだけではなく、右方向へ横滑りも誘発してしまいます。この横滑りをドリフトと呼びます。ドリフトを防ぐにはサイクリックを若干左に傾けて補正しなければなりません。

■急降下

降下の場合は上昇とは逆にコレクティブを下げ、トルクを減少させれば良いわけですが、上昇にしろ降下にしろコレクティブの急激な操作は禁物です。いきなりトルクを0%にするような行為は絶対してはいけません。

揚力は失われ、急速な「落下」がはじまります。こうなってしまうとただコレクティブを上げても落下をとめることはできません。適切なリカバリーを行う必要があります。

まずはコレクティブを少し下げ、サイクリックを倒してベロシティベクトルがHUD内に収まるまで前傾姿勢を徐々に強めていきます。ベロシティベクトルをHUD中央にまでとらえたならば、サイクリックを手前に引き機首上げを行います。このとき、ベロシティベクトルがHUD中央に表示されつづけるようコレクティブを徐々に上げるように調整してください。
そのまま水平飛行に移行できればリカバリー完了、落下速度が前進力に代わっているはずです。

急降下が必要な場合、コレクティブを適度に下げ(下げすぎない)、必ず機首下げを行って前方へ急降下するようにしてください。機首の引き上げは落下からのリカバリーと同様です。
急降下は大加速力が得られる為AAAに狙われており急速離脱したい場合等にも有効です。

カリキュラムのハイ/ローヨーヨーで習った「高度エネルギーの速度への変換」は、ヘリコプターでも通用します。

■高速時の急転回

通常飛行中の旋回は機体を任意の方向へロールさせることにより行います。ホバリング時のようにペダルを操作しての転回はできません。速度の出ている通常飛行中は飛行機とほとんど変わらないので、ペダルを踏み込んでもわずかに横滑りするだけです。
ロール角を大きく取れば飛行機同様急旋回が可能です。

ですが、ここでは旋回ではなく転回の方法を解説します。
高速飛行時、できるだけ小回りに転回するにはまずその速度を殺さなければなりません。余計な速度を殺すには、「速度エネルギーの高度への変換」を利用します。

まず、コレクティブを大きく上げ、サイクリックを引き、急角度の機首上げを行います。あまりにも急激な機首上げを行うと、上昇せずに降下してしまうので注意。機種上げど同じタイミングでベロシティベクトルが常に中央に表示されていると理想です。

速度が50kt以下になったらコレクティブを下げ、速度が0kt近くに達したら大きくペダルを踏み込んですばやく方向転換します。あんまり強くペダルを使用しすぎるとやりすぎてしまうため注意。転回が終わったならば機首は下向きになっているはずなので、急降下で説明した要領で失った速度を回復します。

この方法は最も小さい半径で旋回でき、しかも見た目上もカッコイイという利点(?)があります。

■ホバリング

ホバリングは困難です。最初は当たり前です。いきなりできる人のほうが変人です。
しかし、ホバリングができなければ離陸も着陸もできません。ここではホバリングのコツを解説します。ただし、あくまでもヒントになる程度ですので、結局最後は自己鍛練しなければなりません。

ホバリングの基本は素早く細かい修正です。動き始めてから修正しては遅すぎます。動きそうであったら、すぐに修正を行います。ホバリング中はサイクリック、コレクティブ、ペダル、全ての舵が常に細かく動きっぱなしになると思って間違いありません。トルクやドリフトを打ち消すことも忘れないでください。
ホバリングはカリキュラムのように100ftのような高い高度ではなく、10ftぐらいで練習すると良いでしょう。10ftのような低い高度であらば目印にする目の前の地面が近く姿勢の制御が比較的楽になります。
また、メインローターから発するダウンウォッシュ(下降気流)が地面にぶつかることによりグラウンドエフェクト(地面効果)と呼ばれる現象によりローターの抵抗が減少するため、より小さいトルクでホバリングする事ができます。

最初はサッカー場ぐらいの面積を必要とするかもしれません。しかし、訓練を重ねればテニスコートへ、最終的には卓球台の上でホバリングできるようになることでしょう。
繰り返しになりますが、操舵は素早く細かく最小量を心がけてください。


以上でアドバイスを終了します。
ヘリコプターの操縦は楽しいものです。私は戦闘機に乗ってる時間よりもヘリコプターに乗ってる時間の方が多くなりつつあります。特にOH-6Dの飛行時間はF-15Eに次いで2番目であり、飛行場のあるステージで色々な機動を楽しんでおります。ヘリコプターを自由に扱えない方はそれなりの練習は必要でしょうが、ぜひOH-6Dの楽しさを味わってみてください。



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